金融円滑化法

12月4日から、話題になった金融円滑化法(いわゆる返済猶予法)が施行されています。実務にもじわりと影響が出始めています。
返済猶予法は、資金繰りが苦しくなった中小・零細企業などを救済するため、借り手から要請を受けた金融機関が返済条件を見直すよう促しています。亀井静香金融担当相が表明したような返済猶予の一律実施を金融機関に義務づけるものにはなりませんでした。結局、金融機関は「努力義務」を負うにとどまります。要請に応じるかどうかは金融機関の判断次第ということです。
 条件の変更は、返済猶予や金利減免、返済期限の延長、債権放棄など様々で、金融機関が借り手と協議して決めます。金融庁が「不良債権」に分類する基準を緩和し、経営再建の可能性があれば不良債権として扱わないようにしたので、金融機関は条件変更に応じやすくなりました。
 また四半期ごとに条件変更に応じた金額や件数を開示するよう義務付け、金融機関が本当に努力しているかどうかわかるようにしています。努力を怠ると、業務改善命令などの処分を科される可能性もあります。
 
 ちょうど、現在リスケジューリングをお願いしている会社があります。この法律は努力義務でありますが、金融機関の対応にも少なからず影響しているようです。金融機関の担当者は、いいタイミングでしたねとおっしゃっていました。
ただ、よい影響ばかりでもないようです。以前であれば、金融機関においては不良債権に分類された融資先に対する債権は有税で引当金が設定されていたため、これをカットもしくはサービサーへ売却することによって無税化するというスキームがとられていました。これによって債務者サイドも救われるケースも多くありました。ところが今後は金融機関は不良債権に分類されない債権をカットする必然性がなくなってしまうことになるので、債権カットが行われにくくなるという懸念があるからです。