27年度税制改正が成立

 3月31日に開かれた参議院税制改正案が可決成立し、予定どおり公布され、4月1日に施行されました。これにより、27年4月1日以降開始事業年度から法人税率が引き下げ、欠損金繰越控除の縮小、受取配当の益金不算入の見直しなどの変更が行われることとなりました。また、消費税の税率が平成29年4月1日から引き上げられることが確定しました。
 
 デフレ脱却・経済再生に向けて、成長志向に重点を置いた法人税改革、高齢者層から若年層への資産の早期移転を通じた住宅市場の活性化、投資家のすそ野拡大のための施策。地方創生のための施策。経済再生と財政健全化を両立させるための社会保障・税の一体改革などがその内容です。
 
 中小企業やその経営者に関連する主な改正について、もう少し具体的に見ていきます。

法人税率等の引き下げ(減税)
 27年4月1日以降開始事業年度から、法人税の税率が25.5%→23.9%に引き下げられます。中小法人の800万以下の部分に対する税率も19%→15%に引き下げられます。
 これにより、実行税率は34.62%→32.11%(中小法人以外)となりました。数年前まで40%を超えていたことを考えるとずいぶん下がりました。

○欠損金の繰越控除制度に見直し(大法人は増税、中小は減税)
 欠損金の繰越控除の控除限度額が、23年度改正で80%まで圧縮されたのに続き、今回もその限度額を下げる改正が行われました。27年4月1日以降開始〜65%、29年4月1日以降開始〜50%と段階的に引き下げられます。ただ、こちらは、資本金1億円以下の中小法人については適用されず、これまでどおり全額控除することができます。
 一方、繰越期間については、9年→10年と延長されることになりましたので、中小法人にとっては今回の改正はメリットだけになります。

○受取配当等の益金不算入制度の見直し(増税
 益金不算入の対象となる株式等の区分ごとの不算入割合が見直されました。
・全額益金不算入になる対象が、保有割合25%以上→1/3超となりました
 結果として保有割合が25%以上1/3以下の会社からの配当については、100%不算入から50%の不算入ということになり、かなりの増税です。
保有割合が5%以下の場合益金不算入割合が20%になってしまいました。
 これまでは、最低でも50%は益金不算入とできたものが20%となってしまうのでこちらも影響が大きい改正です。

 一方、益金不算入割合50%、20%の場合は、負債利子控除の対象から除外されることとなりました。

○所得拡大税制の所得増加割合要件の緩和(減税)
 所得拡大税制の要件が緩和されより使いやすくなりました。

 28年4月1日以降開始事業年度から 
 中小企業者・・・5%→3%
 それ以外 ・・・5%→4%

○外形標準課税の拡大(増税
 資本金1億円超の法人の外形標準課税について見直しが行われました。
 上記のように法人に対する実効税率の引き下げの一環として事業税の所得割の税率が下げられる一方、付加価値割と資本割の税率については引き上げられることになりました。実効税率は下げるがなるべく税収は下げないようにしたいということでしょう。
 ただし、付加価値割の計算は給与支給額を増やすと増額する計算になっているので、政府の推奨する給与増加の方針に反することになりかねません。そこで、付加価値割に所得拡大促進税制を導入し調整することとしました。一定割合以上給与支給額を増額させた場合にはその増加額を付加価値割の課税標準から控除できることにしたのです。

○地方拠点強化税制(減税)
 政府の地方創生政策の一環として、地方拠点建物等を取得した場合の特別償却または税額控除、地方拠点の雇用者を増やした場合の税額控除制度ができました。
 どちらも、地方再生法の地方拠点強化実施計画について承認を受けたものが対象で、なんでもよいわけではありませんのでご注意ください。

○消費税率の10%への引き上げ時期の変更(増税の先送り)
 本年27年の10月1日の予定だった10%への税率引き上げが、29年4月1日からと変更になりました。