29年度税制改正

 29年度の税制改正法が3月27日に成立し、4月1日から施行されました。
 中小企業者に関連する事項を中心に説明していきます。
1.法人税関係
(1)研究開発税制の見直し
 あらゆる業種の研究開発投資を後押しするため、「サービス」の開発を支援対象に追加するとともに、安倍政権の民間企業の研究開発投資の対GDP比3%という目標を着実に達成するために、研究開発税制においてもその増額に対するインセンティブを組み込むことにしました。
鄯)試験研究費の範囲の見直し
 これまでは、製品の製造又は技術の改良等に限られていましたが、「対価を得て提供する新たな役務(新サービス)の開発に係る試験研究費のために要する一定の費用」をその範囲に加えました。
 例)自然災害予測サービス、農業支援サービス、ヘルスケアサービス、観光サービスなど

鄱)税額控除率(総額型)  
 29年度改正において控除率が、試験研究費の増減割合に応じて変動する形になりました。

 ・中小企業者以外
  (改正前)試験研究費の総額×8〜10%(限度額は法人税額の25%)
             (売上高試験研究費比率に応じて)
             ↓
  (改正後)試験研究費の総額×6〜14%
             (試験研究費増減率に応じて)
 ・中小企業者
  (改正前)試験研究費の総額×12%(限度額は法人税額の25%)
             ↓
  (改正後)試験研究費の総額×12%〜17%(限度額は法人税額の25%+〜10%)
       (試験研究費の増加率に応じて)  (試験研究費割合に応じて)

(適用期間)平成29年4月1日以降開始事業年度から

(2)所得拡大税制の見直し
 従来から、一定の賃上げをした企業にはその増加額の10%の控除が認められる制度がありました。
 29年度改正では、さらなる賃上げを実現するために、企業の賃上げインセンティブを強化する改正が行われました。
鄯)適用要件の改正
 改正前から1.給与等支給総額の基準年度からの一定割合以上の増加、2.前事業年度以上、3.平均給与等支給額の前事業年度超という要件がありました。このうち、3つ目の要件が改正になり、大企業については、平均給与等支給額は前年を超えるだけではなく、2%以上増加することが必要になりました。
鄱)税額控除の改正
 改正前は、一律増価額の10%でしたが、賃上げ率に応じた控除額になりました。
 大企業   :賃上げ率2%以上→12%
        賃上げ率2%未満→対象外(鄯の改正)
 中小企業者等:賃上げ率2%以上→22%
        賃上げ率2%未満→10%

(適用期間)平成29年4月1日以降開始事業年度から

(3)中小企業経営強化税制の創設
 中小企業の稼ぐ力を向上させる取り組みを支援するため、生産性向上設備等に係る即時償却等について、中小企業経営強化税制として改組し、創設しました。
 生産性向上設備(A類型)と収益力強化設備(B類型)の2種類がありますが、共通の要件として、青色申告を提出する中小企業者等であること、中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けなければならないことが挙げられます。また、新品の生産等設備であることが必要で、事務用器具備品、本店、寄宿舎等に係る附属設備等は対象外になります。設備ごとの金額要件やその他の要件をクリアすれば、即時償却又は7%の税額控除が可能です。
(その他の要件) 
 A類型:生産性が旧モデル比年平均1%以上改善
     工業会等による確認
 B類型:投資収益率が年平均5%以上の投資計画に係る設備
     経済産業局による確認
(対象設備の金額要件)
 機械装置:160万円以上
 器具備品:30万円以上
 建物附属設備:60万円以上
 ソフトウェア:70万円以上

(適用期間)平成29年4月1日〜平成31年3月31日までの取得等

2.所得税関係
(1)配偶者控除配偶者特別控除の見直し
 妻がが就業調整をすることによって、夫に配偶者控除が適用される103万円以内にパート収入を抑える傾向がある(いわゆる103万円の壁)との指摘に対応するため、それを意識しなくて済む仕組みを構築する観点から配偶者控除配偶者特別控除を見直すこととしました。これにより人手不足の解消による日本経済の成長に資することを期待するのものとされています。
 上記は、配偶者の給与収入の壁を103万円から150万円に増額することによる就業調整要因の排除という社会からの要請に応じた改正で減税ですが、もうひとつ同時に増税の改正が行われています。配偶者特別控除のみに設定されていた夫の所得要件が配偶者控除にも適用されることとなりました。夫の所得が900万円(給与収入1120万円)を超えると配偶者控除が徐々に減少し、その所得がが1000万円(給与収入が1220万円)以上になると配偶者控除配偶者特別控除いずれも受けられなくなってしまいました。

(適用時期)平成30年分の所得税から

3.消費税関係
(1)仮想通貨の消費税非課税化
 ビットコインなどの仮想通貨の譲渡はこれまで課税資産の譲渡等に該当していましたが、「支払手段」として位置づけられることや諸外国の取り扱いを踏まえ、非課税扱いとなりました。
 (適用時期)平成29年7月1日以降
 ただし、直前に大量の仮想通貨を購入することによる節税?を防止する観点から平成29年6月末に100万円以上の仮想通貨を保有する場合は、直前1カ月に平均保有量より増額した分についての課税仕入れは仕入れ税額控除が認められないという措置が採られています。

4.資産税関係
(1)居住用超高層建築物に係る課税の見直し
 いわゆるタワーマンションの高層階を購入することによる節税が話題になっています。タワーマンションは一般的に低層階に比べ高層階の物件の方が高い価額で取引されていますが、相続税評価は階層は加味されない計算方法になっています。そこで富裕層が高額な物件を購入することによる節税を行っている現状があるようです。また、固定資産税についても同様、床面積が同じであれば同じ固定資産税が課されていました。
 29年度の改正では、このうち固定資産税の見直しが行われました。対象は高さ60mを超える物件で、物件全体の固定資産税は変えず高層階ほど税額が高くなるように改正がなされました。不動産取得税についても同様の評価額の補正が行われます。

(適用期間)平成30年度から新たに課税されることとなる物件から

 相続税評価については29年度改正では変更はありませんでしたが今後の見直される可能性がありそうです。

(2)非上場株式等に係る相続税贈与税の納税猶予制度の見直し
 いわゆる事業承継税制について、中小企業の高齢化の進行を踏まえ、事業承継のさらなる促進を図る観点から、雇用確保要件の緩和の改正が行われました。
 納税猶予制度の適用を受けた場合の5年間雇用8割維持という要件がありますが、この計算方法を1人未満の端数「切上」げから「切捨て」に改正されました。細かい改正のようですが、小規模な事業者の場合大きな影響があります。
 例えば、4人→3人に減ってしまった場合、
 改正前:4人×0.8=3.2 →切上げで計算すると4人以上の維持が必要だからダメ
 改正後:4人×0.8=3.2 →切捨てで計算すると3人以上の維持でOK

(適用期間)平成29年1月1日以降に相続等により取得する財産から

(3)取引相場のない株式の評価の見直し
 相続税法時価主義の下、より実態に即した評価の見直しが行われました。具体的には類似業種比準方式による株価の算出方法の見直しです。
・類似業種の上場会社の株価について、直前3ヶ月の最安株価と前年平均株価の選択だったのが、もうひとつ選択肢が増えて、前月以前2年間の平均株価も加わりました。3つうちの最安株価を選択できるので有利になりました。
・比準要素の比重が変わりました
 配当金額:利益金額:簿価純資産価額の比重について、1:3:1→1:1:1となりました。
 利益がでている会社にとっては有利になると思われます。

(適用時期)平成29年1月1日以降の相続等により取得した財産評価から

(4)広大評価の見直し
  これまでの広大地評価を実際の取引価格をより反映した方法に変更する改正が行われました。
これまでは面積に応じて比例的に減額する評価方法だったのが、各土地の個性に応じて形状・面積に基づき評価する方法に見直されました。

 (適用時期)平成30年1月1日以降相続等により取得する財産について適用



  
 
 

28年度税制改正

 28年度税制改正について説明いたします。今年はだいぶ遅くなってしまいましたが、6月に入って消費税の税率引上げ時期が延期されることになったので、それを踏まえて説明したいと思います。中小企業に関連する事項を中心にピックアップしていきます。

○法人実効税率が20%台へ
 安倍政権なってから法人時刻税率は数年内に20%台へということをずっと言ってきましたが、この28年度からいよいよ実現します。20%台といっても29.97%なので約30%ということです。数何前まで40%程度だったことを考えると、10%程度引き下げられたことになります。
 ただ、この29.97%というのは外形標準課税の対象法人の数値で、多くの中小企業の場合は年800万円超の部分については33.8%です。
                改正前   28年度   29年度   30年度
 中小法人:400万円以下     21.42%  21.42%  25.99%  25.99%
      400万円〜800万円   23.20%  23.20% 27.57%  27.57%
      800万円超      34.33%  33.80%  33.80%  33.59%
 中小法人以外          32.11%  29.97%  29.97%  29.74%
(外形標準課税の対象法人)

○建物附属設備・構築物の減価償却方法の定額法への一本化
 法人の実効税率を引き下げるだけだと、税収が減ってしまう一方なので、課税ベースを引き上げるための改正です。建物附属設備と構築物について、取得当初の償却を多くできる定率法を選択できなくなり、定額法が強制されることになりました。
 建物附属設備の例としては、冷暖房設備、照明設備、通風設備、昇降機など。
 構築物の例としては、舗装道路、岸壁、桟橋、配電用鉄塔、緑化設備などです。

○企業版ふるさと納税
 ふるさと納税といっても、個人のふるさと納税とは全く違います。個人の場合のように特産物などの返礼品はありません。また寄付先は、どこの地方自治体でもよいわけではなく、地域再生法の認定地方公共団体に対する寄付についてです。現在北海道など105件の申請があり、8月中に事業の認定が行われる予定です。
 従来との違いは、節税効果が約2倍(約3割から6割へ)になったというところです。ただ、個人版のふるさと納税のように一定額までなら個人の負担はほぼゼロなのと異なり、企業版ふるさと納税では、約6割の節税にはなるのですが、逆に言うと4割は法人の負担になるということです。

○生産性向上設備を取得した場合の固定資産税の軽減措置の導入
 中小企業が、事業所所轄大臣の認定を受けた「経営力向上計画」に記載された一定の機械を取得した場合には、その機械に対する固定資産税が3年間1/2に軽減されます。
 「経営力向上計画」の策定、認定というハードルがありますが、購入予定の機械が高額の場合その節税効果も大きいので検討してみる必要があります。
 例)1億の機械の場合の初年度の節税額概算
  1億×1.4%×1/2=約70万円

○消費税の軽減制度の導入
 消費税の税率が平成29年4月1日からの予定でしたので、これに合わせて軽減税率が導入されることになっていました。具体的には食料品等の税率については8%のまま据え置くというものです。
 ところが、参議院選挙を前にその税率引き上げ日の2年半の延期が決まり、平成31年10月1日からということになりました。したがって、軽減税率の導入もそれに合わせて、2年半延期なります。
 その他、消費税の税率引き上げ関連の改正としては、平成29年4月1日〜33年3月31日までの請求書等の記載方法及び税額の計算方法の特例、平成33年4月1日以降のインボイス制度の導入及び税額の計算方法についてなどがありますが、税率引き上げの延期による影響があり流動的な部分があります。

所得税関連の改正としては
・住宅の多世帯同居改修工事等に係る特例(ローン控除又は税額控除)
・医療費控除の特例としてスイッチOTC薬の所得控除(88,000円が限度)
・空家に係る譲渡所得の特別控除(空家を更地にするなどして譲渡した場合の3000万特別控除)
などがあげられます。

 

27年度税制改正が成立

 3月31日に開かれた参議院税制改正案が可決成立し、予定どおり公布され、4月1日に施行されました。これにより、27年4月1日以降開始事業年度から法人税率が引き下げ、欠損金繰越控除の縮小、受取配当の益金不算入の見直しなどの変更が行われることとなりました。また、消費税の税率が平成29年4月1日から引き上げられることが確定しました。
 
 デフレ脱却・経済再生に向けて、成長志向に重点を置いた法人税改革、高齢者層から若年層への資産の早期移転を通じた住宅市場の活性化、投資家のすそ野拡大のための施策。地方創生のための施策。経済再生と財政健全化を両立させるための社会保障・税の一体改革などがその内容です。
 
 中小企業やその経営者に関連する主な改正について、もう少し具体的に見ていきます。

法人税率等の引き下げ(減税)
 27年4月1日以降開始事業年度から、法人税の税率が25.5%→23.9%に引き下げられます。中小法人の800万以下の部分に対する税率も19%→15%に引き下げられます。
 これにより、実行税率は34.62%→32.11%(中小法人以外)となりました。数年前まで40%を超えていたことを考えるとずいぶん下がりました。

○欠損金の繰越控除制度に見直し(大法人は増税、中小は減税)
 欠損金の繰越控除の控除限度額が、23年度改正で80%まで圧縮されたのに続き、今回もその限度額を下げる改正が行われました。27年4月1日以降開始〜65%、29年4月1日以降開始〜50%と段階的に引き下げられます。ただ、こちらは、資本金1億円以下の中小法人については適用されず、これまでどおり全額控除することができます。
 一方、繰越期間については、9年→10年と延長されることになりましたので、中小法人にとっては今回の改正はメリットだけになります。

○受取配当等の益金不算入制度の見直し(増税
 益金不算入の対象となる株式等の区分ごとの不算入割合が見直されました。
・全額益金不算入になる対象が、保有割合25%以上→1/3超となりました
 結果として保有割合が25%以上1/3以下の会社からの配当については、100%不算入から50%の不算入ということになり、かなりの増税です。
保有割合が5%以下の場合益金不算入割合が20%になってしまいました。
 これまでは、最低でも50%は益金不算入とできたものが20%となってしまうのでこちらも影響が大きい改正です。

 一方、益金不算入割合50%、20%の場合は、負債利子控除の対象から除外されることとなりました。

○所得拡大税制の所得増加割合要件の緩和(減税)
 所得拡大税制の要件が緩和されより使いやすくなりました。

 28年4月1日以降開始事業年度から 
 中小企業者・・・5%→3%
 それ以外 ・・・5%→4%

○外形標準課税の拡大(増税
 資本金1億円超の法人の外形標準課税について見直しが行われました。
 上記のように法人に対する実効税率の引き下げの一環として事業税の所得割の税率が下げられる一方、付加価値割と資本割の税率については引き上げられることになりました。実効税率は下げるがなるべく税収は下げないようにしたいということでしょう。
 ただし、付加価値割の計算は給与支給額を増やすと増額する計算になっているので、政府の推奨する給与増加の方針に反することになりかねません。そこで、付加価値割に所得拡大促進税制を導入し調整することとしました。一定割合以上給与支給額を増額させた場合にはその増加額を付加価値割の課税標準から控除できることにしたのです。

○地方拠点強化税制(減税)
 政府の地方創生政策の一環として、地方拠点建物等を取得した場合の特別償却または税額控除、地方拠点の雇用者を増やした場合の税額控除制度ができました。
 どちらも、地方再生法の地方拠点強化実施計画について承認を受けたものが対象で、なんでもよいわけではありませんのでご注意ください。

○消費税率の10%への引き上げ時期の変更(増税の先送り)
 本年27年の10月1日の予定だった10%への税率引き上げが、29年4月1日からと変更になりました。


 

26年度税制改正大綱

 昨日、自民、公明両党が、26年度の税制改正大綱を決定しました。新聞等にもそのポイントが掲載されていますが、ここでは中小企業やその経営者に特に影響がありそうな項目をピックアップしてみます。
○復興特別法人税の1年前倒し廃止(減税)
 経済の好循環を早期に実現する観点から、足元の企業収益を賃金の上昇につなげていくきっかけとするために、復興特別法人税を1年前倒しで廃止することになりました。

○所得拡大促進税制の拡充(減税)
 上記と同様の観点から、雇用を増やしたり賃上げをしていく企業を一層支援するため、所得拡大促進税制を拡充することとしました。

○交際費課税の見直し(減税)
 景気対策の一環として、消費の拡大を図る観点から、交際費課税の見直しを行い、大企業にも飲食のための支出の50%の損金算入を認めることにしました。

○給与所得控除の見直し(高額給与所得者への増税
 実際の給与所得者の勤務関連支出に比しても、また、主要国の概算控除額との比較においても過大となっていることから見直しが行われることとなりました。28年より段階的に給与所得控除の上限を段階的に下げていきます。

○生産性向上設備投資促進税制の創設(減税)
 産業競争力強化法の制定に伴い、同法の施行日から平成29年3月31日までの間に、先端設備及び生産ラインやオペレーションの改善に資する設備への投資を行った場合に、特別償却または税額控除を選択することができるようになります。

○少人数私募債の利子所得の20%源泉分離課税の廃止(増税
 あまり報道されていませんが、同族会社の私募債発行による節税が完全に封じられることになりました。現在は、私募債の社債利息については20%の源泉分離課税で課税関係が終了するので、高額所得者にとっては大きな節税効果が得られていました。
 これについて平成28年1月1日以降に支払いを受けるものについては総合課税により計算しなければならなくなりました。

○ゴルフ会員権、リゾート会員権の譲渡損の損益通算の禁止(増税
 ゴルフ会員権等の売却により損出しすることにより所得税を大きく節税できることが以前から問題視され、これまで何度も年末になると改正の噂が出ては消えていました。これがついに今回の改正されることになりました。
 適用は26年4月1日以降の譲渡についてなので、含み損のあるゴルフ会員権を保有している人は26年3月31日までの譲渡を検討してみる必要があるかもしれません。

○消費税の簡易課税制度のみなし仕入率の見直し(増税
 実態とのかい離を是正するため、消費税の簡易課税のみなし仕入率についての次の見直しが行われることになりました。
 金融業及び保険業(第5種事業):60%→50%
 不動産業(第6種事業)    :50%→40%




 

25年度税制改正

 先週24日、自民党税制調査会は「平成25年度税制改正大綱」を決定しました。今年は、去年までとは違いこのままスムーズに成立すると思われます。詳細はこれから決まることが多いのですが、主な改正点を挙げておきます。
所得税関連
・所得4千万円超の税率を45%に引き上げ
・住宅ローン減税
 平成29年まで延長の上、消費税率が上がった場合には、それに合わせて平成26年4月居住開始以降は借入限度を4千万に拡充
・同族会社発行の社債利息を源泉分離から総合課税へ
・上場株式の譲渡所得と非上場株式の譲渡所得の通算不可

法人税関連
・生産等設備投資促進税制創設
 年間投資額が減価償却費を超え、かつ前年度比で10%超増加した事業年度で、新たに取得した機械・装置について30%の特別償却または3%の税額控除を認める
・研究開発税制拡充
 税額控除の限度額を法人税の20%→30%へ引き上げ、特別試験研究費の範囲を拡大
・商業、サービス業、農林水産業を営む中小企業の経営改善設備投資減税の創設
 商工会議所等の経営改善指導により店舗改修等をした場合、30%の特別償却又は7%の税額控除
・雇用促進税制の控除額引き上げ ※所得拡大促進税制との選択
 1人20万円→40万円
・所得拡大促進税制の創設 ※雇用促進税制との選択
 給与額を基準年度比5%増加させた場合、増加額の10%を税額控除
・交際費課税改正
 中小法人の限度額を600万円→800万円へ拡大し、全額損金算入可

相続税
・遺産にかかる基礎控除の引き下げ
 5000万+1000万×相続人 → 3000万+600万×相続人
相続税の税率構造の改正
 6億円超に55%を新設し、6段階から8段階へ
・暦年贈与の贈与税の税率構造を改正し、55%の税率を新設
・相続時精算課税の範囲拡充
 贈与者の年齢を60歳に引き下げ、受贈者の範囲に20歳以上の孫を追加
・小規模宅特例適用上限拡大
 240平米→330平米
・小規模宅地の居住用宅地の二世帯住宅の構造要件撤廃、老人ホーム入居の空き家の要件緩和
・子、孫への教育資金一括贈与を1500万円まで贈与税非課税
 金融機関等へ信託し、30歳時の残高には贈与税
・事業承継税制適用要件の緩和

○その他
印紙税の金銭等の受取書の免税点引き上げ
 3万円未満→5万円未満

23年以降の税制改正

 税制改正というと、通常は12月末に翌年度の税制改正大綱がでて、これが3月末の法案の成立後4月1日から施行という流れになります。ところが、去年の震災の影響でずいぶん変則的になっています。
 23年度改正は、23年6月改正と23年12月改正と2段階で成立しています。そこで積み残したものが24年度改正の税制改正大綱であがってきている状態です。更に、現在話題になっている消費税率を中心とした「社会保障と税の一体改革」案のなかにもその他の重要な税制改正が含まれています。
○23年度税制改正のうち成立したもの(主なもの)
 ・法人税の税率引き下げ(実効税率の予定 現状40.69%→H24年度〜38.01→H27年度〜35.64%)
 ・青色欠損金の所得金額の100分の80への制限(資本金1億超など)〜H24/4/1以降開始事業年度から
 ・青色欠損金の控除期間を9年に延長〜H20/4/1以降終了事業年度の欠損金から
 ・貸倒引当金制度の廃止〜H24/4/1以降開始事業年度から
 ・減価償却250%定率→200%定率〜  〃
 ・消費税の免税事業者の判定を年度開始の日から6ヶ月とする〜H25/1/1以降開始事業年度から
 ・消費税〜課税売上高5億円超の場合は課税売上割合95%以上の仕入税額控除全額控除の不適用〜H24/4/1以降開始課税期間から
 ・更正の請求期間及び更正の期間を5年に延長〜H23/12/2以降申告期限のものから
 ・当初申告要件の廃止(受取配当の益金不算入、所得税額控除等)〜H23/12/2以降申告期限のものから
○23年度改正のうち、24年度改正に先送りされたもの
 ・給与所得控除について245万円の上限(収入1500万円)の設定〜H25年分から
 ・退職金〜役員等の勤続年数が5年以下である者の2分の1制度の不適用〜H25以降支払分から
社会保障と税の一体改革案
 ・所得税率の5千万超は45%への引き上げ(現在37%)〜H27年分から
 ・相続税基礎控除引き下げ(3千万+600万×相続人)
 ・相続税贈与税最高税率を55%に引き上げ
 ・消費税の税率引き上げ(H26/4/1〜8%、H27/10/1〜10%)
 ・消費税の事業免税点について、売上5億円超の会社の子会社は1年目から課税


  

23年度税制改正大綱

先週のことになりますが、12月16日に平成23年税制改正大綱が閣議決定されました。主な内容は次の通りです。
法人税
・法人実効税率引き下げ:法人税国税)30%→25.5%に
 国内企業の国際競争力強化が主目的であり、赤字もしくは所得の少ない多くの中小企業へのプラス効果はあまりないでしょう。
・中小企業軽減税率引き下げ:18%→15%
 800万以下の所得にかかる税率なので、最大800万×3%=24万の減税。
減価償却費制度の見直し:定率法の償却率は、定額法の償却率の2.5倍から2倍に縮小
平成19年度改正で、設備投資を促進し、生産手段の新陳代謝の加速化により、企業の国際競争力とわが国の経済の持続的成長を維持するために、ということで導入した新しい減価償却制度をもう変えるんですね。
・欠損金の繰越控除制度の見直し:中小法人を除き、欠損金の繰越控除限度額を80%に制限、一方繰越期間を7年から9年に延長します。
 資本金1億円以下の中小法人については、繰越期間の延長メリットだけを享受できるようです。
・雇用促進税制:従業員のうち雇用保険一般被保険者の数が前年度に比べ10%以上、かつ5人(中小企業は2人以上)以上増加した企業に対し増加1人につき20万円を控除

○資産税
相続税基礎控除引き下げ:「3000万円+600万円×法定相続人数」に縮小
 これにより、なくなられた方に対する課税件数割合は、4%から6%程度になる見込みだそうです。配偶者と子ども二人のケースでは、基礎控除が8000万から4800万になるので影響は結構大きいと思います。
贈与税の見直し:最高税率を現行の50%から55%に引き上げ

所得税
・給与所得控除の見直し:年収1500万円超は245万円を上限とする
・役員給与等に係る給与所得控除の見直し:年収2000万円超はさらに控除額を最大1/2まで圧縮する
 上記二つは、22年度改正で業務主宰者役員給与の損金不算入制度を廃止する際に予告していた法人段階と個人段階での二重控除問題解消のための措置です。
・成年扶養控除(23歳から69歳)の見直し:年収568万円超の場合、控除を廃止・縮小
成年者は独立して生計を立てるべきとの趣旨。
・証券優遇税制の延長:上場株式等の配当等及び譲渡所得等に係る10%軽減税率の適用が2年間延長
・勤続年数5年以下の法人役員等の退職金について、1/2課税を廃止

○消費税
・事業者免税点制度の見直し:前年課税売上高が1千万超の事業者は免税点制度を適用しない
・課税売上割合が95%以上の場合に課税仕入等の税額を全額控除できる制度は、課税売上高5億円以下の事業者に限定

大綱の全文は下記
http://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/2010/h23zeiseitaikou.pdf